2007.03.03 14:10

五百円

本屋の店頭の500円DVDワゴンの中に、キーロフ・バレエの『白鳥の湖』を発見。指揮者「W・フェドトフ」というのは、あのフェドートフさんかな。名前はヴィクトルだから、イニシャルはWじゃなくてVで表すのが一般的だと思うけど。カバーには、出演者や収録年など、手がかりになりそうなものは一切無し。本編78分ということは、かなりカットはされているはずだけど、フェドートフさんの指揮なら欲しい。
そのまま悩んでいてもしょうがないので、とりあえず買うことにしました。まあ、500円だし。
レジで500円玉をぽんと出して、それでキーロフ・バレエ『白鳥の湖』が私のものに。500円と事前にわかってはいたものの、実際に支払ってみると、こんなに呆気なく、バレエ映像が手に入ったことにちょっと混乱。

私が市販のバレエ映像の存在を初めて知ったのは、1983年『ballet & dance』(という日本語の雑誌があったんです)の広告によってでした。その広告では、フェルナンド・ブフォネスが出演している『コッペリア』のビデオの値段は1本50,000円(5千円じゃないですよ、5万円です、5万円)。マーゴット・フォンティーンがガイドを務める「マジック・オブ・ダンス」全6巻は各巻8万円(全巻そろえると48万円)。
私はブフォネスの『コッペリア』も、「マジック〜」に収録されているという森下さんの『ドン・キホーテ』も、フォンティーンの『ジゼル』も、そしてアンナ・パヴロワの「瀕死の白鳥」も切実に見たかったのですが、この価格では購入を検討する余地もなくあきらめました。

あらためて当時の広告を見ると、あのビデオはバレエ団等の専門機関が利用することを前提に販売されており、もともと小さかった映像ソフトの市場で、理由は不明ですが、さらに購買層を非常に狭く限定したことが、価格を押し上げる一因になっていたのかもしれません。
翌84年に発売されたミハイル・バリシニコフの『ドン・キホーテ』は、16,800円。価格がぐっと下がっています。とはいえ、現在と比較すると、かなりの高額ですよね。1980年代半ば、バレエ映像の価格は高く、そして種類もほとんどありませんでした。

あれから20余年。5万円と8万円の壁にあっけなくはじき飛ばされた当時の無念が忘れられない身としては、今や500円玉一個で(たとえカットされていても)キーロフの『白鳥の湖』が買えてしまうということに、喜ぶよりも先にある種の訝しさを感じずにはいられませんが、情報伝達技術が加速的に進化して、社会に普及する昨今、ネット配信で全幕1つが数百円で購入できる時代も、あっという間にやって来るのかもしれません。

(購入したDVDはまだ見ていないので、中身の報告は後日。)

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